神戸・ユダヤ文化研究会 2023年度第1回文化講座のご案内

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神戸・ユダヤ文化研究会 2023年度第1回文化講座のご案内

みなさまいかがお過ごしでしょうか? ロシアによるウクライナ侵攻には相変わらず決着がつかないままですが、コロナ禍はさすがに収束の兆しを見せています。
神戸・ユダヤ文化研究会では2023年度第1回目の文化講座を下記のとおり開催いたします。ローレンス・ランガーの『ホロコーストの文学』に代わる新たな「ホロコーストの文学」と呼ぶべき『死者は生者のなかに――ホロコーストの考古学』(みすず書房)を著わされた西成彦さんをお招きするとともに、気鋭の若手、林大地さんと中井杏奈さんにユダヤ文化についてそれぞれのご研究から語っていただきます。
今回も対面とオンラインの併用で開催いたします。奮ってご参加ください。

 

日時:2023年5月27日13:30~17:00(開場:13:15)

場所:神戸まちづくり会館2階ホール
〒650-0022 神戸市中央区元町通4-2-14
℡ 078-36104523

参加費:正会員=無料、一般参加者=500円、学生=無料(受付で学生証をご提示下さい)
オンラインでの参加は無料です。参加については事務局(jjskoffice@yahoo/co.jp)までお問い合わせ下さい。

 

講演1 林大地さん(京都大学大学院博士後期課程)13:30~14:20

【タイトル】アーレントの記憶論に向けて――「忘却の穴」の否定とその理由

【要旨】アーレントが『全体主義の起原』でその存在を認めた「忘却の穴」は、奇妙なことに、後年の『エルサレムのアイヒマン』ではその存在を否定されることになる。これはなぜなのか。その理由を『活動的生』の「行為論」を媒介として考えてみたい。

【略歴】1997年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。専門は20世紀のドイツ思想、とりわけハンナ・アーレント。アーレントの主著『活動的生』を、「世界」概念に着目しながら読解している。主な論文に「世界への気遣いとしての活動的生――ハンナ・アーレント『活動的生』における活動の場所指定の重要性」『社会システム研究 第25号』など。

 

講演2 中井杏奈さん(東京外国語大学非常勤講師)14:30~15:20

【タイトル】エヴァ・クリルクの布——折り重ねられたユダヤ性と記憶

【要旨】本発表では、ポーランドのクラクフ出身のユダヤ系アーティストであるエヴァ・クリルク(Ewa Kuryluk、1946-)の制作した「布」の芸術作品シリーズを、彼女の著作・カタログを通じて分析する。クリルクは、1970年代後半から80年代、聖骸布にまつわるキリスト教の伝承(ユダヤ女性ヴェロニカの聖人伝)と物質の芸術的効用という関心から、「布」という素材に着目した。このマテリアルは、近代工業化と大量生産や、アウシュヴィッツにおいて収奪されたユダヤ人の衣服・囚人服を想起させる素材でもある。こうした点を踏まえ、ユダヤ女性ヴェロニカの聖人伝を通じての布というマテリアルとの邂逅が、クリルクの創作におけるユダヤ性と記憶の関係を表象可能にした条件を考察する。

【略歴】専門は中東欧現代史、思想史。中央ヨーロッパ大学 歴史学部(ウィーン/ブダペスト)後期博士課程 (単位取得満期退学)。東京外国語大学「公共圏の歴史」プログラム・非常勤講師および同大学海外事情研究所研究員等。近著:に「ウクライナの隣人としてのポーランド–戦後ポ  ーランド知識人の思想と行動から辿る二国間関係」『現代思想』2022年5月臨時増刊特集号掲載(青土社)Voicing Memories, Resurfacing Identity: Cases of the Twenty-First Century Literature from Eastern and East-Central Europe)With Aleksandra Konarzewska(Vernon Press, 2023)等。

 

講演3 西成彦さん(立命館大学名誉教授)15:30~17:00

【タイトル】ホロコースト文学は誰が担うのか?

【要旨】ホロコーストの犠牲者は、かならずしもユダヤ人ばかりではないが、ユダヤ人が占めた比率は高い。しかし、そのホロコーストに巻き込まれた側には、加害者性や共犯者性を引き受けた非ユダヤ人が数多く含まれる。クロード・ランズマンの『SHOAH』(1985)は、その全体を見渡そうとした野心的な試みではあったが、ドイツ人やポーランド人の描き方には、異論がある。そんななか『死者は生者のなかに』(2022)を書くなかで苦労したことがらを二三取り上げて話したい。

【略歴】1955年岡山県生まれ。兵庫県(伊丹市、西宮市)育ち。東京大学大学院博士課程中退後、1984年から熊本大学、1997年から立命館大学で比較文学を講じる。
ユダヤ関係の著書・訳書は、『移動文学論①イディッシュ』(1995)、『移動文学論②エクストラテリトリアル』(2008)、ショレム・アレイヘム『牛乳屋テヴィエ』(2012)、『アイザック・バシェヴィス・シンガー傑作選、不浄の血』(共訳、2013)、『世界イディッシュ短篇選』(共訳、2018)
*西成彦さんは事情によってはオンラインでの登壇となる可能性があります。