《ポーランド文学古典叢書》第5巻『ディブック/イヴォナ』(未知谷)刊行記念企画 S・アン=スキ作『ディブック――二つの世界のはざまで』

ディブック・シアターX

《ポーランド文学古典叢書》第5巻『ディブック/イヴォナ』(未知谷)刊行記念企画

『ディブック』関連イベントのご案内

2016年

2月4日(木)・5日(金):18:00~20:45(東京・両国 シアターX(カイ))
朗読劇『ディブック』+演奏会「東欧ユダヤ音楽とハシディズムの旋律」

2月6日(土):13:30~18:30(東京大学本郷キャンパス)
『ディブック』――記録映画上映とシンポジウム「越境するユダヤ演劇」

Y・ワフタンゴフ演出によるヘブライ語劇団「ハビマ座」の初演(1922年1月31日、モスクワ)
Y・ワフタンゴフ演出によるヘブライ語劇団「ハビマ座」の初演(1922年1月31日、モスクワ)

なにゆえに、なにゆえに
魂は
天の高みから
奈落の底に落ちるのか?
転落はそのうちに
飛翔の芽を宿すがゆえに

S・アン=スキ『ディブック』の刊行を記念して

2015年10月、ポーランド文学古典叢書第5巻として『ディブック/イヴォナ』(西成彦編、赤尾光春・関口時正訳)が刊行されました。『ディブック』とは、ユダヤの民間伝承に伝わる悪霊伝説を下敷きに、前世の契りによって結ばれた若い男女が辿る悲劇を描いたユダヤ演劇史上もっとも有名な戯曲です。

1920年にワルシャワでイディッシュ劇団による初演が好評を博し、1922年にはモスクワでヘブライ語劇団による上演が大反響を呼んで以来、この作品は、英語、ドイツ語、ロシア語、フランス語、ポーランド語、ウクライナ語、スウェーデン語、ブルガリア語、ルーマニア語、エスペラント語などに翻訳されて上演され、世界中の観客を魅了してきました。その反響は遠く日本にも及び、1930年(昭和5年)には、「ディブツキ」(エス・アンスキイ作)として『世界戯曲全集』(世界戯曲全集刊行會)の第39巻(西班牙・猶太劇集)に収録されています。今回の翻訳は実に85年振りの「再訳」にして、イディッシュ語による戯曲テクストの日本語訳としては初の試みとなります。

『ディブック』は、とくにロシア演劇界の鬼才Y・ワフタンゴフ演出による「ハビマ座」の上演(ヘブライ語)が世界演劇史上に残る伝説的な舞台の一つとなり、これを観たソ連映画界の巨匠セルゲイ・エイゼンシュタインは生涯忘れ得ぬ経験の一つに挙げ、ドイツ演劇界の「皇帝」マックス・ラインハルトは「これは演劇ではない、神の礼拝だ」と述べています。また、映画、ラジオ、テレビ、オペラ、バレエなどに次々と改作され、バレエ作品『ディブック』にはレナード・バーンスタインが楽曲を提供しています。

このようにユニークな遍歴を辿った作品の日本語訳の刊行を記念して、朗読劇『ディブック』の上演と東欧ユダヤ音楽の演奏会(シアターX)を開催いたします。さらに公演最終日の翌日(2月6日[土])には、記録映画の上映とシンポジウム「越境するユダヤ演劇」(東京大学本郷キャンパス)も予定しています(以下の「関連企画」をご参照ください)。

このたびの企画が、失われた東欧ユダヤ世界の豊穣な文化のみならず、演劇がもつ文化的越境の可能性に触れていただける機会となれば幸いです。

dybbuk projekt代表 赤尾光春

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主催:文部科学省・科学研究費・基盤研究(B)「「ユダヤ自治」再考――アシュケナージ文化圏の自律的特性に関する学際的研究」(研究代表者:赤尾光春)

共催:大阪大学文学研究科ドイツ文学研究室

協力:未知谷、神戸ユダヤ文化研究会

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シアターX(カイ)特別提携公演

dybbuk projekt
朗読劇『ディブック――二つの世界のはざまで』(S・アン=スキ作、赤尾光春訳)

 

日時:2016年2月4日(木)/5日(金)18:00~20:45(開場は開演の30分前)

場所:劇場 東京・両国 シアターX(カイ)

参加費:無料(各回につき定員160名)

予約受付070-5350-1972 / e.pithecanthropus[at]gmail.com(atは@に変換してください)[赤尾]

プログラム:

第1部(18:00~18:50)

解説:「『ディブック』の文化的背景について」

赤尾光春(大阪大学)

演奏会:「東欧ユダヤ音楽とハシディズムの旋律(ニグン)」

演奏:ドレイデル・トリオ=クラリネット:樋上千寿(オルケステル・ドレイデル)、アコーディオン:秦コータロー、歌:赤尾光春

第2部 (19:00~20:45)

朗読劇:『ディブック――二つの世界のはざまで』

演出:鈴木径一郎(sputnik.)

出演:岸本愉香(sputnik./第2劇場)、宮本荊(LifeR)、石田雅章(劇団イシダトウショウ)、濱本直樹(DanieLonely)、江本真里子、小中太、赤尾光春

舞台監督:向井哲和

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S・アン=スキ(1863-1920)ש. אנ-סקי

S・アン=スキ(1863-1920)

S・アン=スキ(1863-1920)ש. אנ-סקי

イディッシュ語作家、ロシア語作家、民俗学者、社会活動家。1863年ベラルーシのヴィテプスク地方に生まれる(本名シュロイメ・ザインヴル・ラポポルト)。貧しいユダヤ人家庭に生まれ、伝統的な教育を受けたが、ロシアの社会思想に感化されナロードニキ運動に参加し、ロシア語で小説や社会評論を執筆。1892年、ロシアを去ってパリで亡命生活を送った後、スイスで社会革命党(エス・エル)の創設と活動に携わり、1905年にロシアに帰国して以降は、ユダヤ文化復興における中心的人物の一人となった。1912から14年にかけてユダヤ民俗調査団を率いてウクライナのユダヤ人集落のフォークロアを収集し、戯曲『ディブック』を創作。第一次世界大戦中には前線のユダヤ人難民の救済事業に携わり、その記録を『ガリツィアの破壊』にまとめた。ロシア革命の難を逃れてワルシャワ近郊に移住し、1920年、死去。

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〈解説および歌と出演〉
赤尾光春:大阪大学文学研究科助教。専門はユダヤ文化研究。編著に『ディアスポラから世界を読む』、『シオニズムの解剖』、『ディアスポラの力を結集する』がある。大阪外国語大学時代に劇団「檜舞台」で活動した後、ベケット『ゴドーを待ちながら』やピンター『おとなしい給仕』(The Dumb Waiter)等の上演に携わった。

〈演出〉
鈴木経一郎:2007年に大阪で結成された劇団 sputnik.に所属。脚本家が毎回ローテーションする劇団にあって、本公演全ての演出を担当している。作・演出作品は『エレホンの雪』(2011)、『宿酔』(2013)、『驚く方法は忘れた』(2014)等。

〈出演〉
石田雅章:大阪外国語大学インド・パキスタン語ウルドゥー語学科卒。1985年初舞台。2006-2007パリ第7大学留学、専攻はベケット演劇、現代劇、能、コンテンポラリー・ダンス。帰国後『劇団イシダトウショウ』発足、ベケット作品の上演を目指す。

江本真里子:フリー。役者。神奈川県出身。関西小劇場を中心に活動中。

岸本愉香:牡羊座。女優。憑依型と見られるが、繊細さが武器。2010年より㐧2劇場の演劇に参加。2013年よりsputnik.にも参加。自己紹介「自己紹介を書くのが苦手です。なにを書いても後で恥ずかしくなるんじゃないかと思ってしまう」。

小中太:過去劇団暇だけどステキ、WI’REに所属。2007年から劇団子供鉅人に所属、2015年に退団し現在はフリー。関西を中心に活躍している。所属以外に客演数も多く、ジャンル問わず様々な舞台に出演。最近の客演作として、桃園会、コトリ会議、日本海などに参加。

濱本直樹:伊丹想流私塾、アイホール演劇ファクトリー、伊丹想流私塾マスターコース卒。Fance_pan退団後、永見陽幸と共にDanieLonelyを立ち上げる。関西小劇場を中心に活動。

宮本 荊:東京都内で活動中のLifeR、主宰。作・演出・出演など。共感できる喜びより知られない不幸を書き、痩身と薄幸な顔でそれを体現する。自作に限らず客演時も大抵不幸な役を回される。第一回笹塚演劇王特別男優賞。

〈演奏〉
樋上千寿(クラリネット):美術史家、ユダヤ音楽演奏家。シャガールの作品解釈を進める中でユダヤ文化研究へ傾倒。さらにクレズマー音楽の演奏へと活動の場を広げる。2003年にオルケステル・ドレイデルを結成、イディッシュ音楽の普及に努めている。

秦コータロー(アコーディオン):幼少の頃からクラシックピアノを学ぶ。2010年よりアコーディオンを始め、第4回ローランドVアコーディオンフェスティバル日本予選ファイナル出場。現在はソロライブ、レコーディング、バンドのサポート等、幅広い活動を行っている。

本企画はJSPS 科研費 26284115 の助成を受けて実施するものです。

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《関連企画》

『ディブック』――記録映画上映とシンポジウム

越境するユダヤ演劇

セルペル演出『ディブック』
ツヴィカ・セルペル演出『ディブック』

日時:2016年2月6日(土)13:30~18:30

場所:東京大学本郷キャンパス 法文2号文学部1番大教室(定員220名)

参加:無料(事前申し込み不要)

プログラム:

開会の辞(13:30-13:40):西成彦

第1部(13:40-16:10):記録映画の上映と講演(ツヴィカ・セルペル・テルアビブ大学教授)

上映:『ディブック あるいは二つの世界の間で』(イスラエルでの上演の記録映画、日本語字幕あり)約2時間

講演:「『ディブック あるいは二つの世界の間で』の演出における日本伝統演劇の要素と美学」(日本語

第2部(16:30-18:30):シンポジウム「『ディブック』――その成立と受容をめぐって」

司会:沼野充義(東京大学)

パネリスト:西成彦(立命館大学)、村井華代(共立女子大学)、赤尾光春(大阪大学)、鴻英良(演劇批評家)、ツヴィカ・セルペル(テルアビブ大学)

主催:東京大学文学部現代文芸論研究室/文部科学省・科学研究費・基盤研究(C)「比較植民地文学研究の新展開――「語圏」概念の有効性の検証」(研究代表者:西成彦)

本企画はJSPS 科研費 15K02462 の助成を受けて実施するものです

ディブック・シアターX

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ディブック・チラシ 中面

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