神戸・ユダヤ文化研究会 2024年度第3回目の文化講座

「トーマス・マン『ヨセフとその兄弟たち』とオスカー・ゴルトベルクの思想」

神戸・ユダヤ文化研究会では、今年度の総会と第3回目の文化講座を、対面とオンラインの併用で開催します。イスラエルによるガザ攻撃は、収束を見せつつありますが、ウクライナの今後はいまだ見通せません。こうしたなか、ソ連の亡命作家の1人が、「お手本」だとして挙げたのが、第二次大戦中にドイツから亡命した作家たちでした。

「当時の政治に直接言及するような作品ではないにもかかわらず真に反ファシズム的である所以は、彼らがそれらの作品をドイツ語で書くことにより、ナチスからドイツ語を守っていたという点に尽きる」。

(「無数の橋をかけなおす──ロシアから届く反戦の声/奈倉有里 」より。
https://note.com/monthly_shincho/n/ncf0c3ba8f7db )

こんかいはそうした作家トーマス・マンが、亡命のさなかに書いた『ヨセフとその兄弟たち』について、鈴木啓峻さんに語っていただきます。
なぜマンは、「亡命先」で、「ユダヤ」に、集中的に取り組んだのか、、、が、中心テーマです。
総会は会員のみの参加となりますが、文化講座の内容や講師の希望について会員のみなさまから寄せていただく時間を取りたいと考えています。総会と文化講座に多数の参加を期待しています。

 

■ 日時 2025年3月22日(土)

13:15              開場
13:30-13:45 総会
13:45-14:00 休憩
14:00-15:30 鈴木さん講演「トーマス・マン『ヨセフとその兄弟たち』とオスカー・ゴルトベルクの思想」
15:30-15:45 休憩1
5:45-16:45 質疑応答・ディスカッション 60分

 

■ 参加方法

対面での参加費は、正会員=無料、一般参加者=500円、学生=無料(受付で学生証をご呈示下さい)。オンラインでの参加費は無料です。ご参加の詳細に関しては、神戸・ユダヤ文化研究会事務局( jjskoffice@yahoo.co.jp )までお問い合わせください。

 

■ 場所 (いつもの場所とは違います) 兵庫県学校厚生会館 2階西会議室

〒650-0012 神戸市中央区北長狭通4-7-34
078-331-9955
https://www.kouseikai.or.jp/public/fukushi/kaikan/kaigishitsu/

会場からのお願い
・発熱時・咳・喉の痛み等体調不良時にはご来館をお控えください。
・入館時には、手指の消毒や施設内での手洗いをお願いします。
・施設内での対人距離については、適度な間隔の確保を図るようにお願いします。
・引き続き、「咳エチケット」にはご配慮ください。

 

■ 講演

鈴木啓峻「トーマス・マン『ヨセフとその兄弟たち』とオスカー・ゴルトベルクの思想」

トーマス・マン(1875-1955)が『ヨセフとその兄弟たち』四部作を発表した1933年から1943年までの期間は、ナチが政権を握った時代とほぼ重なる。「神話と心理学」という、この作品のために掲げられたプログラムは、したがって、ナチズムによる「神話」の非人間的濫用に対するアンチテーゼを提示しようとしたと言えるだろう。それはとりもなおさず、宗教的なるものと人間心理、あるいは人間社会との間に、好ましい関係を見出そうとする試みであった。他方で、四部作を執筆するにあたってマンが参照した数多くの書物の中に、オスカー・ゴルトベルク(1885-1952)の『ヘブライ人の現実』(1925)がある。カバラ研究から出発し、同時代の生気論やスピリチュアリズムに影響を受けたゴルトベルクは、モーセ五書の、科学的見地からすれば「神話」として切り捨てられるであろう記述に、独自の現実性を見出し、旧約聖書に描かれた神秘的な「力」が復活する未来を幻視した。マンは、ゴルトベルクの思想を危険視しながらも、その魅力を無視することはできなかった。この講演では、先行研究の助けを借りながら、マンがゴルトベルクの思想をいかに受容したかに迫りたい。

 

■ 講師略歴
鈴木啓峻(すずき けいしゅん)
1988年生まれ。京都大学博士(人間・環境学)。大阪大学人文学研究科言語文化学専攻講師。論文に「トーマス・マン文学におけるイロニー・自己愛・共感」(京都大学大学院人間・環境学研究科『社会システム研究』第24号、2021年、19-38頁)、「ドミトリー・メレシコフスキーを読むトーマス・マン —— 「第三の国」における「エロス的禁欲」の位相をめぐって」(日本独文学会京都支部『Germanistik Kyoto』、第22号、2021年、21-41頁)など。