神戸・ユダヤ文化研究会 2024年度第1回文化講座のご案内
みなさまいかがお過ごしでしょうか? ロシアによるウクライナ侵攻にもガザ地区にたいするイスラエルの攻撃にも収束の兆しが見えません。このやっかいな状況のなかで、神戸・ユダヤ文化研究会では2024年度第1回目の文化講座を開催いたします。
以前にアーレントの『エルサレムのアイヒマン』の問いなおしをふくめて、アイヒマン裁判、アウシュヴィッツ裁判をテーマに取りあげましたが、今回はアーレント研究者の森川輝一さんに登壇いただき、アーレントの『エルサレムのアイヒマン』に集中した議論を行いたいと思います。合わせて、若手のアーレント研究者である大形綾さんに研究発表をしていただきます。会場が京都大学ですので、ご注意ください。
今回も対面とオンラインの併用で開催いたします。奮ってご参加ください。
日時:2024年6月15日14:00~17:00(開場:13:45)
場所:京都大学総合人間学部1102教室
https://www.h.kyoto-u.ac.jp/access1/
〒606-8501 京都市左京区吉田二本松町
℡ 075-753-6572(細見研究室)
参加費:正会員=無料、一般参加者=500円、学生=無料(受付で学生証をご提示下さい)
オンラインでの参加は無料です。参加については事務局( jskoffice@yahoo/co.jp )までお問い合わせ下さい。
講演1 大形綾さん(日本学術振興会特別研究員)14:10~15:10(質疑応答を含む)
【タイトル】出生前診断と優生思想の結びつきについての一考察――ハンナ・アーレントの視点から
【概要】近年の目覚ましい医療技術の発展によって、胎児の発育や様子は詳細に分かるようになってきた。胎児の染色体異常の有無を調べる「出生前診断」も、安全かつ簡便に行えるようになり、ひろく一般の人々に知られるようになっている。しかし、出生前診断が「命の選別」につながる、という倫理的な課題についての議論は、人びとのあいだでいまだ十分になされていない。本発表は、優生思想が政治利用されることの危険性をハンナ・アーレントの著作から再考し、多様性が叫ばれるこんにちの日本社会における、出生前診断の導入について考察を行う。
【略歴】大形 綾(おおがた・あや)京都大学人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。日本学術振興会特別研究員(RPD)。専門は社会思想史。著書に『アーレント読本』(共著、法政大学出版局)。共訳書に、マリー・ルイーズ・クノット編『アーレント=ショーレム往復書簡集』(岩波書店)。
講演2 森川輝一さん(京都大学教授)+コメント 香月恵里さん(岡山商科大学教授) 15:20~17:00(講演、コメント、質疑応答を含む)
【タイトル】〈悪の凡庸さ〉について――『エルサレムのアイヒマン』をめぐる終わりなき論争
【要旨】ホロコーストの首謀者アイヒマンは〈凡庸な悪〉なのか? 60余年前にアーレントが引き起こし、未だ決着のついていない論争を、『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』等の最新の研究を踏まえ、複数の視点から捉え直す。
【略歴】森川輝一(もりかわ・てるかず)1971年生。西洋政治思想史。名城大学法学部准教授を経て、現在京都大学公共政策大学院教授。『〈始まり〉のアーレント――「出生」の思想の誕生』(岩波書店、2010)、『政治学入門――歴史と思想から学ぶ』(共著、有斐閣、2023)、等。