皆さま、
寒さも緩み雨の滴る日も増えてまいりましたが、いかがおすごしでしょうか。先だっては関西地域における緊急事態宣言も解かれたところではございますが、新型コロナウィルスの感染状況はいまだ予断を許しません。神戸・ユダヤ文化研究会の本年度の総会および本年度分第2回目となる文化講座はオンラインにて開催いたします。
今回の文化講座では、ナチス時代のヨーロッパ・ユダヤ人の体験を二人の強制(労働)収容所の生存者の作品から振り返ります。黒田晴之副代表からは、ブコヴィナ出身の画家・作家、アーノルド・ダガーニの作品について、北島玲子さん(上智大学名誉教授)からは、オーストリア出身の作家、ジャン・アメリーについてお話しいただきます。収容所での体験の形象化という問題に加え、ユダヤ人同化やユダヤ・コミュニティにおける東西の分断等、幅広いテーマで議論ができる構成となっております。
オンラインという形式ではございますが、それ故にこそご参加いただけるという方もいらっしゃいますし、良い交流の機会ともなるでしょう。皆様のお越しをお待ちしております。
■日時:文化講座
2021年3月27日(土)
【総会】
12:00-13:00
【文化講座】
13:15~14:45 講演①+質疑応答
15:00~16:45 講演②+質疑応答
17:00~17:55 全体討論
【懇親会】
18:00~21:00
■参加方法:
※今回はインターネット上のみでの開催です。
※※ご参加の詳細に関しては、神戸・ユダヤ文化研究会事務局( jjskoffice@yahoo.c.jp )までお問い合わせください。
■参加費
無料 (※今回は暫定的に無料としますが、ご寄付等あれば歓迎いたします)
■文化講座
① 講演:「ダガーニの描いた3点の花の絵」
講師 :黒田晴之(松山大学教授、本会副代表)
講演要旨:
第二次世界大戦時、トランスニストリアでの道路建設のために、ブコヴィナのユダヤ人は強制労働に駆り出された。アーノルド・ダガーニ(Arnold Daghani, 1909-1985)もそうしたユダヤ人の1人である。かれはそのときの体験を絵画と日記に記録しただけでなく、おなじモティーフの絵を晩年まで繰り返し描きつづけた。だがその画面はしだいに文字によって覆い尽くされていく一方で、だれなのか分からない顔まで出てくるようになる。こうしたジャンル分け不可能なダガーニの作品を、わたしたちはどう受け止めたらよいのか検討する。
講師略歴:
専門は20世紀ドイツ文学(カネッティ、ハンス・ヘニー・ヤーンなど)と東欧ユダヤ音楽。著書は『クレズマーの文化史』(人文書院、2011年)、共訳にヤーン『岸辺なき流れ』(国書刊行会、2014年)など。
② 講演:「ジャン・アメリーにおける克服されない過去――拷問、ルサンチマン、ユダヤ人であることの強制」
講師 :北島玲子(上智大学名誉教授)
講演要旨:
アウシュヴィッツの生還者であるアメリーは、戦後20年を経てナチズムとの対決の書『罪と罰の彼岸』を世に問う。「拷問」「ルサンチマン」「ユダヤ人であることの強制」という3つのキーワードに沿いながら、「キリスト教の教育を受けたオーストリア人」であったアメリーが、ナチス時代のみならず、戦後もユダヤ人犠牲者として生きていくことを余儀なくされた過程を追い、そこからどのような独自の思考を展開していったかを考察する。
講師略歴:
専門は20世紀ドイツ語圏文学(ムージル、カネッティなど)。著書は『終わりのなき省察の行方――ローベルト・ムージルの小説』(上智大学出版、2010年)、『テクストとは何か―-編集文献学入門』(共著、慶応大学出版会、2015年)など。
2021年3月5日