豪雨災害に猛暑・台風と災害つづきの夏でしたが、お変わりありませんでしょうか。
この度、神戸・ユダヤ文化研究会では、20世紀を代表するユダヤ系著述家、ヴァルター・ベンヤミンの思想を主題とし、小林哲也さん(松山大学)、柿木伸之さん(広島市立大学)を招いて文化講座を開催することとなりました。同時代のユダヤ系著述家の中でも例外的に多くの邦訳が刊行されてきたベンヤミンではありますが、先端的な研究の現場では、従来とは異なった姿が浮かび上がってきています。西欧思想、ユダヤ思想のどちらの系譜にも適切に位置づけることのできない、近代ドイツ・ユダヤ思想の一局面についてあらためて学ぶ良い機会になるかと存じます。
以下の要領にて開催いたします。皆様のお越しをお待ちしております。
●日時:2018年9月29日(土)
開場:13:30
講演:14:00-17:00
●場所:兵庫県私学会館303号室(JR元町駅東口より徒歩2分)
TEL:078-331-6623 URL:http://hyogo-shigaku.or.jp
●参加費:正会員=無料、一般参加者=500円、
学生=無料(受付で学生証をご呈示下さい)
●主題:
集中討議「ヴァルター・ベンヤミン、ドイツとユダヤのあいだで」
講演要旨
1) ベンヤミンにおける「ユダヤ性」について考える場合、ゲルショム・ショーレムからの影響は無視しえない。とはいえ、両者の「ユダヤ性」への姿勢は大きく異なっている。ショーレムがユダヤ文化研究に立脚した強固な「物語」を紡いでいったのに対して、ベンヤミンは「ドイツ性」と「ユダヤ性」の間で揺れ続けた。講演では、この揺れが、強固なアイデンティティーに立脚できない「歪んだ」存在を包摂するベンヤミンの歴史哲学を生み出していることを考察する。(小林哲也)
2) ベンヤミンは、1921年にクレーの《新しい天使》を手に入れて以来、著作に繰り返し天使の像を描いている。そこには自身のユダヤ性と、主にドイツ語による著述活動との狭間に、同時にメシアによる救済と、被造物の世界を貫く衰滅との狭間に漂いながら、言語と歴史を徹底的に問うベンヤミンの思考が凝縮されていよう。今回の講演では、そのような天使の像の変貌を手がかりに、言語と歴史をめぐる彼の思考を検討する。(柿木伸之)
講師略歴
小林哲也(こばやし・てつや)1981年、札幌市に生まれる。日本学術振興会特別研究員を経て、現在松山大学経済学部特任准教授。ベンヤミンを中心に20世紀のドイツ語圏の文学・思想を研究している。著書に、『ベンヤミンにおける「純化」の思考――「アンファング」から「カール・クラウス」まで』(水声社、2015年)、論文に「ベンヤミンとショーレム――修復のシオニズム、「忘却」への注意深さ」(『思想』2018年7月)などがある。
柿木伸之(かきぎ・のぶゆき)鹿児島市に生まれる。上智大学文学部哲学科助手を経て、現在広島市立大学国際学部教授。20世紀のドイツ語圏を中心に、哲学と美学を研究している。著書に、『ベンヤミンの言語哲学──翻訳としての言語、想起からの歴史』(平凡社、2014年)、『パット剝ギトッテシマッタ後の世界へ──ヒロシマを想起する思考』(インパクト出版会、2015年)などがある。