ワシーリー・グロスマンの夕べ(全三回) 『トレブリンカの地獄』(みすず書房)刊行記念イベント

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ワシーリー・グロスマンの夕べ(全三回)

『トレブリンカの地獄』(みすず書房)刊行記念イベント

 

7月29日(土)@カフェ・ルーデンス(西宮・夙川)

8月19日(土)@居留守文庫(大阪・文の里)

8月20日(土)@オンガージュ・サロン(大阪・寺田町)

 

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《概要》

本年5月、『トレブリンカの地獄 ワシーリー・グロスマン前期作品集』(赤尾光春・中村唯史訳)がみすず書房より刊行されました。

ワシーリー・グロスマンの名は、スターリングラード攻防戦を軸にナチズムとスターリニズムという二つの全体主義体制下を生きた人々の運命を描いた叙事詩的長編小説『人生と運命』とともに世界文学史に刻まれています。

『人生と運命』の原稿は、スターリンの死後はじまったフルシチョフの「雪解け」の時代、その存在を突き止めたKGBによってタイプライターとインクリボンごと「逮捕」され、作者グロスマンの生前には発表されませんでした。当時のイデオロギー担当書記であったミハイル・スースロフはこの書を評して、「この小説がこの国で200年以内に発表される見込みはない」「敵が我々に発射しようとしている原子爆弾にどうしてあなたの本をつけ加えなければならないのか」と語ったと言われています。

しかし、グロスマンの死後、マイクロフィルムに収められた原稿の写しが西側に持ち出されてソ連国外で刊行されて以来(初版はスイスのローザンヌで1980年に刊行)、二つの全体主義体制の衝突をめぐって生じた悲劇を語る上で欠かせない最重要作品の一つとして今日まで広範囲な影響を与えてきました。

たとえば、仏『ル・モンド』誌は「20世紀で最も偉大なロシア小説」と評し、思想家のエマニュエル・レヴィナスは最も影響を受けた20世紀小説に挙げ、歴史家トニー・ジャットは「20世紀ヨーロッパの10冊」に選出しました。また、思想家のツヴェタン・トドロフはグロスマンを全体主義体制に闘った知識人の筆頭に挙げています。

ワシーリー・グロスマンの前期作品集となる『トレブリンカの地獄』は、『人生と運命』(全三巻)の刊行を皮切りに、『万物は流転する』と『システィーナの聖母 ワシーリー・グロスマン後期作品集』に続いて、みすず書房より刊行されたグロスマン作品の最後の翻訳となります。一連の刊行を通じて、『人生と運命』という作品のみならず、他の代表作とともにグロスマンという作家の全体像について、ようやく日本でも知られるようになってきました。そこで、本書の出版を記念して、大阪市と西宮市の三つの会場にて、テーマ別による「ワシーリー・グロスマンの夕べ」を開催いたします。

各回では、『トレブリンカの地獄』の共訳者である赤尾光春(大阪大学・関西学院大学 非常勤講師)の解説を交えながら、ベテラン女優の志賀澤子さん(東京演劇アンサンブル)をはじめ、東京や関西を中心に多方面で活躍する役者陣の協力を得て、グロスマンの作品群の中から厳選したテクストの朗読を行います(第三回のみ演奏あり)。

また、各回には、『トレブリンカの地獄』の共訳者である中村唯史さん(京都大学教授)、ドイツ・ユダヤ思想史が専門で詩人の細見和之さん(京都大学教授、大阪文学学校校長)、そして比較文学研究の西成彦さん(立命館大学教授)をゲストスピーカーにお招きして、グロスマンの作品とともに関連するテーマについて語っていただきます。

 

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《日時》7月29日(土)、8月19日(土)、8月20日(土)

《場所》オンガージュ・サロン、居留守文庫、カフェ・ルーデンス

《主催》神戸ユダヤ文化研究会

《解説》赤尾光春(大阪大学・関西学院大学)

《構成》鈴木径一郎(sputnik.)

《予約・申し込み先》cafeludens@gmail.com

070-5350-1972[赤尾]

※ 各回、事前予約が必要です。

※※ 各回の朗読テクストは事情により変更になる場合もございます。予めご了承ください。

 

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<第一回>

ユダヤの運命と共にあったロシア作家

――ワシーリー・グロスマンの人生と運命――

 

ワシーリー・グロスマン

「私は、自分をユダヤ人と感じたことは一度もなかった。…それが、この恐ろしい日々にはどうしてだろうね、私の心は、ユダヤの民への母親のようなやさしさに満たされてるの。こんな愛、かつては知らなかった。いとしい息子への愛情にどこか似ているわ。」(『人生と運命』)

 

《日時》7月29日(土)19:00~(開場は18:30)

《場所》カフェ・ルーデンス(おもちゃひろば~Toys’ Campus:https://www.facebook.com/cafeludens/

西宮市羽衣町6-4 アイビー羽衣201 0798-61-7723

《朗読》志賀澤子・赤尾光春・土江優理

「ベルディーチェフの町で」(1934)

「ユダヤ人のいないウクライナ」(1943)

「最後の手紙」(『人生と運命』〔1959〕第一部第18章)

《ゲスト》細見和之さん(京都大学)

《参加費》1500円(ドリンク付)

《定員》20名

《アクセス》https://loco.yahoo.co.jp/place/g-sYwODSvgDrs/

▪阪急神戸線「夙川」駅から南へ徒歩2分

夙川グリーンタウン(ダイエーグルメシティ)の南側にある美容室「Ciel(シエル)」横のスロープを降りて左二軒目の建物「アイビー羽衣」2階(「なかた整骨院」の上)。

▪JR東海道本線(神戸線)「さくら夙川」駅から北西へ徒歩7分

▪阪神電鉄本線「香櫨園」駅から北へ徒歩11分

《備考》翌30日(日)には、大阪・寺田町のオンガージュ・サロンにて、志賀澤子さん(東京演劇アンサンブル)による一人芝居『ROSE ローズ』(マーティン・シャーマン作、堀真理子訳)の大阪での一回限りの初公演があります。ウクライナに生まれたユダヤ人女性の波乱万丈の人生を綴った傑作戯曲『ROSE ローズ』の公演は、東京・両国のシアターX(カイ)にて、月一度のロングランを続けています。詳細:goo.gl/45PRQ8

 

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<第二回>

二つの全体主義に抗して

――ソビエト文学の「正統」から「異端」へ――


「われわれが互いの顔を見るとき、そこに憎むべき顔だけを見るのではありません。われわれは鏡をのぞきこんでいるのです」(『人生と運命』)

「悪に決して負けることのない善の夜明けが始まるその場所において、善と同じく永遠ではあるが決して善に勝つことはできない悪によって、幼児と老人が死に、血が流されるのである」(『人生と運命』)

 

《日時》8月19日(土)18:30~(開場は18:00)

《場所》居留守文庫(https://www.irusubunko.com/

大阪市阿倍野区文の里3丁目4−29 06-6654-3932

《朗読》石田雅章・宮本荊(LifeR)・赤尾光春

「生」

『人生と運命』(1959)より

『万物は流転する』(1961)より

「アヴェル(8月6日)」(1955)

《ゲスト》中村唯史さん(京都大学)

《参加費》1500円

《定員》15名

《アクセス》https://www.irusubunko.com/

・谷町線「文の里駅」より徒歩4分

・JR阪和線「美章園駅」より徒歩6分

・御堂筋線「昭和町駅」より徒歩8分

 

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<第三回>

トレブリンカの地獄

――ワシーリー・グロスマンとホロコースト


ワシーリー・グロスマン

「われわれが所有する資料のすべては、何らかの奇跡でからくも死を免れた人々による報告である。だが、われわれは大地に横たわり自ら語ることのできない人々の代わりに語る責任も負っている。光を当てなければならないのは、バービー・ヤールに連れて行かれた99%の人たちの身に起きたことであって、バービー・ヤールから逃れた5人に起きたことではない。」(ワシーリー・グロスマン)

 

《日時》8月20日(日)17:00~(開場は16:30)

《場所》オンガージュ・サロン(http://www.fluegelmusikakademie.com/Engagesalon-index.html

大阪府大阪市天王寺区勝山3丁目9−4

《朗読》石田雅章・宮本荊(LifeR)・赤尾光春

「老教師」(1943)

「トレブリンカの地獄」(1944)より

『人生と運命』(1959)より

「システィーナの聖母」(1955)

《演奏》ピアノ:呉多美

クラリネット:樋上千寿(オルケステル・ドレイデル)

《ゲスト》西成彦さん(立命館大学)

《参加費》2000円

※ 公演後にレセプションパーティー(有料@¥1,000)がございます。参加を希望される方は申し込みの際にその旨お書き添えください。

《定員》25名

《アクセス》http://www.fluegelmusikakademie.com/access-engagesalon.html

JR環状線「桃谷駅」より徒歩7分

 

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《プロフィール》

 

<企画・解説・朗読>

 

赤尾光春(あかお みつはる)

大阪大学・関西学院大学非常勤講師。専門はユダヤ文化研究。共編著:『ユダヤ人と自治』(岩波書店)、『シオニズムの解剖』(人文書院)、『ディアスポラから世界を読む』(明石書店)、『ディアスポラの力を結集する』(松籟社)、共訳書:ボヤーリン兄弟『ディアスポラの力』、S・アン=スキ/V・ゴンブローヴィチ『ディブック/イヴォナ』(未知谷)ワシーリー・グロスマン『トレブリンカの地獄』(みすず書房)。大阪外国語大学時代に劇団「檜舞台」で活動した後、サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』、ハロルド・ピンター『おとなしい給仕』(The Dumb Waiter)、S・アン=スキ『ディブック』等の上演を企画し、出演した。

 

<朗読>

 

志賀澤子(しが さわこ)

女優、演出家、プロデューサー。東京演劇アンサンブル代表。1963年俳優座養成所卒業、東京演劇アンサンブル入団。『母』ペラゲーア・ウラーソワ、『沖縄』秀、『かもめ』アルカージナなど。演出『FEN-沼地』『マイという女』『海の52万石』など。脚本『食卓のない家』(文化庁創作戯曲賞佳作受賞)。東京演劇アンサンブル海外公演はプロデューサー、女優としてアメリカ、ロシア、ベトナム、イギリス、ルーマニアなど10カ国余り。1995年文化庁在外研修でミラノにて学ぶ。2016年ベトナムより日本との演劇交流貢献賞を受賞。西東京市民劇団銀河ラボ2011年創立以来毎年演出。日本新劇俳優協会理事。同協会のフェスティバル2年連続で演出。2012年から『ローズ』を演じ、翌年から両国シアターXで毎月一回の一人芝居として続けている。

 

石田雅章(いしだ まさあき)

大阪外国語大学ウルドゥー語学科卒、名古屋学院大学大学院英語学専攻修士課程修了、日本大学大学院博士課程中退。2006-2007年、パリ第7大学留学。分野:イスラーム、南アジア文化、言語学、英語音声学、古典演劇、現代演劇、能楽、サミュエル・ベケット、教育学、数学。1985年から関西小劇場界に関わる。1996年から高校で英語の教鞭を執る。現役高校教師。

 

宮本荊(みやもと けい)

LifeR主宰として東京にて活動。その全ての公演で作、演出、出演を務める。舞台演劇を主な手段に、些細な価値基準のずれから理解しがたいまでに行動が迷走し取り返しの付かないマイノリティに陥る可能性を、語を尽くして垣間見せる。また執筆作品のほかに、文語のダイナミズムを求めて小説朗読と芝居の中間となる「本の読み聞かせ」パフォーマンスも各所で行う。

 

土江優理(つちえ ゆり)

関西を中心に活動する役者。【日常の延長線上の非日常の創造】を掲げ既成戯曲を上演する演劇企画集団Contondoに所属。廃館となる公民館の一室での上演時間8時間に及ぶ「展示物としての演劇」や、複数会場複数キャストによるロングラン公演に公演写真展を併催し舞台美術とするなど、独自性のある公演に数多く出演する。個人では地域の福祉施設での演劇活動や教育現場での演劇指導などにも携わる。

 

 

<演奏>

 

呉多美 (Oh Tami)

在日コリアン3世として大阪府で生まれる。相愛大学音楽学部ピアノ専攻を卒業し、渡韓。ソウル大学音楽大学院器楽学科修士課程を卒業。ボン大学に1年間留学。在欧中にウィーン音楽大学マスタークラスなどで研鑽を積む。第17回日本クラシック音楽コンクール好演賞受賞。第8回大阪国際音楽コンクールピアノ部門Age-G入選。第1回アルカスピアノコンクール連弾部門で奨励賞を受賞。現在、相愛高等中学校で後進の指導を務めつつ、ピアノ教室「フリューゲルムジークアカデミー(FMA)」を主宰。関西圏の学校や幼稚園、保育園などでアウトリーチコンサートを行い、クラシック音楽を中心とした音楽と絵本のコラボレーションなど、多様なコンサート活動を展開している。

 

樋上千寿(ひのうえ ちとし)

1966 年京都市出身。美術史家、演奏家。西洋美術史とユダヤ文化史を専攻。幼少よりピアノを習得、高校吹奏楽部でクラリネットを習得。マルク・シャガールの作品解釈を進める中でクレズマー音楽に出逢い、2003年に「オルケステル・ドレイデル」を結成、クレズマー音楽の研究と習得、紹介に努めている。2005年からクレズマー音楽のワークショップYiddish Summer Weimarに参加。2007年から京都と東京で主催公演を開催。そのほか美術館主催のイベントや、大学、学会主催のレクチャー・コンサートにも多数出演。2012、14、16年にシアターX(カイ)主催の国際舞台芸術祭に出演。共著に『ああ、誰がシャガールを理解したでしょうか?』(大阪大学出版会)など。現在、京都造形芸術大学講師。NPO 法人イディッシュ文化振興協会代表理事。

 

<構成>

 

鈴木径一郎(すずき けいいちろう)

演出家、臨床哲学者。大阪大学産学共創本部特任助教。2007年に大阪で結成された劇団 sputnik.に所属し、脚本家が毎回ローテーションする劇団にあって、本公演全ての演出を担当している。近年は実験的なリーディング公演の演出にも携わっている。

 

<ゲスト>

 

中村唯史(なかむら ただし)

1965年北海道生まれ。東京大学大学院人文科学研究科露語露文学専攻博士課程退学、93年より山形大学教養部講師(露語)、2007年同大学人文学部准教授(人間文化学科)、2015年4月より京都大学大学院文学研究科教授(スラブ語学スラブ文学専修)。共編著に『再考ロシア・フォルマリズム:言語・メディア・知覚(共編著)』(2012、せりか書房)、訳書に、イサーク・バーベリ『オデッサ物語』(1995、群像社)、ヴィクトル・ペレーヴィン『恐怖の兜』(2006、角川書店)など。

 

西成彦(にし まさひこ)

1955年生まれ、熊本大学助教授を経て、現在、立命館大学先端総合学術研究科教授。専攻は比較文学で、広くマイノリティと文学の関係を研究。おもな著書に、『イディッシュ』『エクストラテリトリアル』(いずれも作品社)、おもな訳書に、ショレム・アレイヘム『牛乳屋テヴィエ』(岩波文庫)、バシェヴィス・シンガー『不浄の血』(共訳、河出書房新社)等。

 

細見和之(ほそみ かずゆき)

京都大学人間・環境学研究科教授。詩人。

ユダヤ関係の仕事に、イツハク・カツェネルソン『滅ぼされたユダヤの民の歌』(共訳、みすず書房)、同『ワルシャワ・ゲットー詩集』(未知谷)など。最新刊に『ニーチェをドイツ語で読む』(白水社)。