基盤研究(B)「『ユダヤ自治』再考――アシュケナージ文化圏の自律的特性に関する学際的研究」
第一回公開ワークショップ
日時:5月17日(土) 16:00~18:00
場所:大阪大学中之島センター講義室405
http://www.onc.osaka-u.ac.jp/others/map/
参加費:無料、申し込み不要
テーマ:戦間期におけるポーランド・ユダヤ関係史――ワルシャワ・ゲットー「地下史料」の背景――
報告者:宮崎悠(北海道教育大学)
討論者:細見和之(大阪府立大学)
【要旨】
19世紀から20世紀にかけ、ポーランド・ナショナリズムが「多民族的大国」から「ポーランド人の国民国家」への変化を訴えた時期に、旧ポーランド=リトアニア共和国の領域内においては、「ポーランド人」以外のアイデンティティを持つ人々、あるいは「ポーランド人」の自意識を持ちながらも範疇から除外された人々が、それぞれの「民族運動」を高揚させていた。19世紀末から戦間期にかけて、マイノリティ集団の中でも重要な問題と認識されていたのが、「ユダヤ人の問題」であった。
国民国家化しようとするポーランド社会において、「排除される側」だったユダヤ人の反応は、一様ではなかった。第一次大戦から戦間期、ポーランド独立運動が盛んになった時期に、つまり、 ユダヤ人が「ポーランド人」のカテゴリから排除されていく時代に、「ユダヤ人」にカテゴライズされた人々は、どのように対処したのだろうか。
本報告では、戦間期ポーランドにおけるユダヤ人マイノリティの活動、特に在野の歴史家達が、ポーランドの一国史が形成されるのに対抗し、意義を申し立てる形で、どのように歴史叙述を試みたのかを検討する。その際、第二次大戦期に「オネグ・シャバット」として知られることになる記録活動組織の中心となった歴史家エマニュエル・リンゲルブルム(Emanuel Ringelblum 1900-1944)の描いたユダヤ=ポーランド関係史観が、国際情勢の危機の中で変容を余儀なくされる過程を事例として取り上げる。
【報告者・討論者略歴】
宮崎悠(みやざき・はるか):北海道教育大学教育学部国際地域学科講師。専門はポーランド政治史。北海道大学大学院法学研究科博士後期課程修了(2008年)後、北海道大学法学研究科助教、日本学術振興会特別研究員PD、成蹊大学法学部政治学科助教を経て現職。法学博士。著書に『ポーランド問題とドモフスキ』(北海道大学出版会、2010年)、論文に「素晴らしき新世界の遊撃」『成蹊法学』79号(2013年)(http://repository.seikei.ac.jp/dspace/bitstream/10928/412/1/hougaku-79_168-142.pdf)などがある。
細見和之(ほそみ・かずゆき):大阪府立大学現代システム科学域教授。専門はドイツ思想。詩人。『アドルノの場所』(みすず書房)、『言葉と記憶』(岩波書店)、『「戦後」の思想』(白水社)など多数の著書と訳書がある。ワルシャワ・ゲットーを経てアウシュヴィッツで殺害された詩人イツハク・カツェネルソンによるイディッシュ語作品『滅ぼされたユダヤの民の歌』(みすず書房、共訳)及び『ワルシャワ・ゲットー詩集』(未知谷)の翻訳も手がけた。
【主催】
文部科学省科学研究費補助金:基盤研究(B)「『ユダヤ自治』再考――アシュケナージ文化圏の自律的特性に関する学際的研究」(研究代表者:赤尾光春)
【連絡先】
大阪大学文学研究科ドイツ文学研究室(赤尾)
Tel: 06-6850-5116
Email: royterek[atmark]let.osaka-u.ac.jp
[atmark]の箇所には「@」が入ります。